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・菜飯と田楽で一つの料理。「お多福膳ランチ(田舎汁粉付)」実食記。地域による豆腐田楽と串の違いを比較。「なめしでんがく 若やぎ」(愛知県岡崎市)
なめしでんがく


愛知県岡崎市真伝町の「なめしでんがく 若やぎ」でランチ。
店名に掲げる「なめしでんがく」は、漢字で書けば「菜飯田楽」。全国にも田楽料理はあるが、三河の伝統料理としても知られている。
ここで大切なのは、「田楽」と「菜飯」を別々の料理として考えないこと。三河の菜飯田楽は、田楽に菜飯を添えたものではなく、菜飯と田楽を組み合わせて一つの料理として成立している。
したがって田楽は豆腐でなければならないわけではない。こんにゃく田楽であっても、菜飯と組み合わせれば「菜飯田楽」。
実際、こんにゃく田楽と菜飯を組み合わせた料理を見ることができる。
↓ こんにゃく田楽(さくら茶屋、岡崎市)

つまり「菜飯」が必須であり、「何を田楽にするか」は店や料理によって変わる(多くは豆腐田楽)。
これが「なめしでんがく」という料理名を理解するうえでの基本になる。
なめしでんがく 若やぎ
若やぎは岡崎市北部、県道335号線沿い、東名高速道路高架近くに位置する。近隣には岡崎市龍北総合運動場がある。
今回注文したのはランチの「お多福膳」。訪問時の店頭および店内メニュー表示は1,990円。
内容は菜飯、豆腐田楽5本、吸物、小鉢、香の物、食後の田舎しるこ。手作り感があり、品数の多い膳だが、料理の中心は店名通り菜飯と田楽である。

菜飯と田楽は一体
菜飯は細かく刻んだ大根青菜をご飯全体に混ぜ込んだもの。店によってはふりかけのように乾燥青菜を散らす店もあるが、当店は白飯の上に青菜を散らした程度ではなく、飯全体に青菜を程よく混ぜ込んでいる。

そこへ豆腐田楽を合わせる。
豆味噌を使った濃厚な田楽味噌は、白飯だけでも当然合うが、菜飯と組み合わせることで青菜の香味と食感が加わる。田楽を食べ、菜飯を口に運ぶ。この組み合わせそのものが「菜飯田楽」であり、菜飯は付け合わせではない。
店名が「豆腐田楽 若やぎ」ではなく、「なめしでんがく 若やぎ」である理由もここにある。

若やぎの豆腐田楽
今回の田楽は豆腐。長方形に切った豆腐を、先端が二股になった平たい竹串に刺して焼き、赤味噌を塗る。
二股串は豆腐を二点で支えるため、焼く際や食べる際に豆腐が串の上で回転しにくい。愛知県内の豆腐田楽でもよく見る形で、犬山や東三河地域の写真でも同様の串を確認できる。
↓ 愛知県の豆腐田楽

若やぎでは豆腐の表面に八丁味噌を使った練り味噌を塗り、その中央に練り辛子を細くのせている。
練り辛子は若やぎだけの特徴ではなく、三河周辺の田楽ではよく見られる組み合わせ。木の芽を添える店もあるが、木の芽は山椒の若芽なので季節限定とする店が多い。
他店や地域の田楽写真を見比べても、練り辛子を使うもの、木の芽を使うもの、それぞれある。
重要なのは薬味の違いよりも、豆味噌を使った田楽と菜飯を一緒に食べるという料理の組み立て。
同じ豆腐田楽でも地方によって姿が違う
豆腐田楽そのものは三河だけの料理ではない。全国各地にあり、地域によって豆腐の形、串、味噌、焼き方、薬味が異なる。
岩手県など東北地方で見られる豆腐田楽は、厚めに切った豆腐を一本の太い串に刺し、囲炉裏や炭火の周囲に立てて焼く姿が印象的。素焼きした豆腐に味噌を塗り、さらに炙る。三河の平たい二股串に刺した田楽とは外観からしてかなり違う。


三重県伊賀地域にも豆腐田楽がある。竹串や平串に豆腐を刺して焼き、味噌を塗る点は共通するが、味噌や薬味は異なる。木の芽、胡麻などを使うものもあり、季節によって薬味を変える例もある。


滋賀県をはじめ近畿地方にも豆腐田楽は伝わっており、白味噌系、合わせ味噌系など、地域によって味噌の仕立ても変わる。

写真を並べて比較すると、「豆腐を串に刺して味噌を塗って焼く」という基本形は共通していても、一本串か二股串か、豆腐を厚く切るか薄く切るか、赤味噌か白味噌か、辛子か木の芽かといった違いがある。
家庭向け商品になると、さらに姿が変わる。豆腐、田楽味噌、竹串をセットにした商品も流通しており、電子レンジなどで温めて家庭で田楽を作る商品もある。料理店の郷土料理から家庭料理、流通商品まで、「田楽(でんがく)」という料理の広がりは大きい。



「田楽」と「菜飯田楽」は分けて考えたい
各地の豆腐田楽を見ていくと、田楽そのものは全国に広く存在する料理であることがわかる。 一方、三河で特徴的なのは、その田楽を「菜飯」と組み合わせ、「菜飯田楽」という一つの料理として現在まで食べ続けていること。
豆腐田楽だけを取り出せば岩手にも三重にも滋賀にもある。しかし三河では、田楽の横に必ず菜飯がいる。
菜飯と田楽を一組にした料理は、江戸時代の東海道筋で広く食べられ、滋賀県目川から東海道沿いへ伝わった。現在も滋賀県栗東市、静岡県中・西部、愛知県などにその組み合わせが残る。その中でも三河周辺では『菜飯田楽』として郷土料理として定着している。
しかも田楽は豆腐に限定されない。こんにゃくでもよい。主役はあくまで「菜飯+田楽」という組み合わせ。
だからこそ、この店の名前は「なめしでんがく 若やぎ」。
料理を食べてから店名を見るのではなく、店名から料理を見ると、三河で「菜飯田楽」が一つの料理として受け継がれてきたことがよくわかる。
■お多福膳

今回のお多福膳では、菜飯田楽に吸物、小鉢、香の物が加わる。
吸物や小鉢を一品ずつ説明するよりも、膳全体を見ると役割がわかりやすい。濃厚な田楽味噌と菜飯を中心に、吸物、小鉢、香の物を間に挟む。



食後は田舎しるこ。粒を残した小豆に焼き餅を入れたもの。菜飯田楽を中心とした食事の最後を甘味で締める。これ旨い。単品では770円なのでランチだとかなりお値打ち感がある。

「お多福膳」は、若やぎの看板料理である菜飯田楽を基本に、副菜と甘味まで組み合わせた膳料理。
店舗の外観からこれだけ丁寧な料理を提供する店だとは思わなかった。これだから「通りかかりひょっこり実食」はやめられない。
■店舗情報
なめしでんがく 若やぎ
愛知県岡崎市真伝町字抱六岩22-13
電話0564-46-3822
営業時間11:00~15:00(L.O.14:30)
定休日 水曜日、第3木曜日
駐車場13台


◆菜飯田楽実食記



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