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・1970年代の記憶と重ねる駅ビルの一杯。店内調理スープの「活性感」と自社製麺の調和を検証する。
■ 1970年代後半の京都学生生活と「食の原風景」
私事ながら、1970年代後半の4年間、住民票を移して京都市民として学生生活を送っていた。当時は月額1万円の風呂なし、共同水洗、共同トイレという、今思えば極めて趣のある下宿であり、日当たりの悪い部屋で過ごした経験がある。
入学当初こそ自炊を試みたものの、やがて簡略化され、昼は学食、夜は即席麺という、お世辞にも豊かとは言えない食生活であった。それゆえ、たまに敷居をまたぐ「餃子の王将」や「吉野家」、そして夜半にやってくるラーメンの屋台は、当時の私にとって最上級の贅沢品。
後年、自身の子供が東京の大学へ進学する際、真っ先に朝夕の食事提供がある施設(学生会館等)を探したほどであり、この学生時代の貧弱な食体験こそが、当方のその後の食品調達や食への執着、すなわち「食の原風景」を形成している。
当時、先輩から「これが京都ラーメンだ」と教えられた屋台の味は、今でいう「背脂チャッチャ系」の系譜。鶏ガラ主体のスープに背脂を浮かせたものか、あるいは豚骨と鶏を合わせた濃厚色タイプであったか、詳細な記憶は朧げであるが、そのコクのある旨味には深く感動した記憶がある。
就職後、激務に疲れると愛知県から自家用車を駆って下宿のあった周辺を訪れることがあった。現地に立つと、忘れていたはずの記憶が次々と蘇り、精神的なリフレッシュと翌日からの業務への活力を得ることができた。
40代以降は仕事で京都を訪れる機会が増え、新幹線利用の動線として京都駅ビルを利用する機会も増えた。
■ 京都拉麺小路の変遷と、2026年5月の訪問
2006年、京都錦市場の老舗「かね松」の販売方法等の売場構築を視察した帰路、京都駅ビル10階の「京都拉麺小路」を初めて訪れた。
当時実食したのは「宝屋」である。典型的な京都ラーメンのスタイルを保持していたが、残念ながら2011年に閉店。その後継として背脂チャッチャ系の元祖である「ますたに」が出店した経緯を持つ。
20年前、50歳を目前にした当方にとって、宝屋のスープは学生時代の感動を呼び起こすコク旨タイプであった一方、加齢に伴い少々背脂の重さが気になる年齢になっていたことも事実である。
↓ 宝屋実食(2006年)

そして2026年5月、久々に京都駅を訪れた。 駅構内等で食事を摂る際、妻とは別行動を選択することにしている。多種多様な飲食店が存在する中で、自身の特定の嗜好(今回はラーメン検証)に妻を付き合わせることは、顧客満足の観点からも推奨できないためである。妻はいつものように使い慣れたベーカリーショップへ向かい、家族向けのパンを調達していた。
現在の京都拉麺小路のラインナップ(2026年5月時点)は以下の通り。 「麺や虎鉄(北海道)」「ワンタンメンの満月(山形)」「富山ブラック 麺家いろは」「祗園らぁ~めん京(京都)」「麺匠たか松(京都)」「UNO RAMEN(京都)」「中村商店(大阪)」「ラーメンこがね家(兵庫)」「ラーメン東大(徳島)」。なお、博多一幸舎が5月26日に閉店し、6月12日より「元祖博多だるま」が出店する旨の掲示を確認した。

■ 中村商店のブランド戦略とスープにおける「活性感」の追求


今回、あえて京都ラーメンの店舗ではなく、大阪高槻の名門「彩色ラーメンきんせい」のセカンドブランドである「中村商店」を選択した。当店は当初「彩色ラーメンきんせい」ブランドで出店後、リニューアルを機に「中村商店」へと屋号を変更している。
当店に注目した理由は、長時間営業を余儀なくされる駅ビル・フードコート型の店舗でありながら、「店内調理(店炊きスープ)」にこだわる姿勢を示している点にある。
食品製造におけるセントラルキッチンシステム(CK)に対し、合理性や食品衛生管理、品質の均一化という観点から一切の偏見を持たない。オペレーションに課題があり、味のブレや提供品質が安定しないレベルの店であれば、CKシステムの方が客席満足度は高いと判断する。
しかしながら、温泉における「足元湧出泉」と同様、スープにおいても「時間の経過による酸化が進行していない、フレッシュで活力のあるスープ」を本質的に嗜好する。
一括抽出・冷凍・解凍・再加熱を経たスープにはない、店炊きならではのスープの「活性感」を検証することが目的である。
■ 実食検証:期間限定 柚子塩らーめん味玉入り(1,380円)
人気メニューは「金の塩」であり、ほかに「鶏白湯」「中華そば」を揃える。券売機の前で「鶏白湯」か「金の塩」かで迷ったが、最終的に「期間限定 柚子塩らーめん味玉入り(1,380円)」のボタンを押した。



配膳された丼の構成は、鶏清湯スープ、塩ダレ、柚子皮、炙りチャーシュー、髪ねぎ(白髪ねぎ)。



スープの構成と柚子の影響
一口含むと、ベースとなる鶏清湯の緻密な厚みが伝わってくる。公式情報によれば、レギュラーの「金の塩」のスープベースは名古屋コーチンや京赤地どり、各種魚介をドリップ(濁り)が出ないよう適正な温度帯で静かに炊き出したものであるという。
店内調理ならではのフレッシュな風味が感じられるものの、今回の仕立てにおいては「柚子」の柑橘香と酸味が、清湯スープの繊細な出汁の輪郭を完全に支配してしまっている。
焼き葱の風味や炙りチャーシューの香ばしさは相乗効果を生んでいるが、ベースの完成度が上々であるだけに、柚子の主張の強さが一歩前に出すぎている印象は否めない。
「自家製麺」の表示に関する考察
店頭等で「自家製麺」の表示を確認したが、この商業施設内の限られた厨房スペース(バックヤード)に製麺機を配置し、小麦粉の粉塵管理(ハザード制御)や加水率の管理を厳格に行うことは極めて困難である。
推察として、これは「当店内製麺」を指す狭義の自家製麺ではなく、高槻市のきんせいグループ本部の製麺工場、あるいは管理下にある拠点で一括製造された「自社製麺(グループ内製造麺)」であると解釈した。麺自体の食感やスープとの親和性は、適正にコントロールされている。
■ 総評:商業施設における店内調理の価値
駅ビル10Fにあるラーメン店集積地という高密度な商業環境において、仕込みの手間とコストがかかる店内調理を維持している点、および仕入れ原料の出自(名古屋コーチン、京赤地どり等)を開示している姿勢は、表示と実態の整合性を重視する当方として評価できる。
次回訪問の機会があれば、柚子によるフレーバーコントロールが入らない、純粋なスープの素性を確認できる「金の塩」を実食し、その店炊きスープのポテンシャルを再度官能評価したいと考える。
🔳京都のラーメン店実食記
・2019/09/21新福菜館大津京店(※滋賀県です)
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