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・法師温泉長寿館(群馬県)宿泊記
北関東秘湯の旅
奥鬼怒温泉(栃木県)から群馬県と新潟県境にほど近い法師温泉まで奥日光~日光(東照宮・華厳の滝)~日本ロマンチック街道経由でドライブ移動。
標高800mにある法師温泉には一軒宿の長寿館がある。
日本秘湯の会のスタンプ帳を持参して訪れた。
秘湯の会の宿のスタンプ帳10個で、スタンプ押印宿に一泊無料宿泊ができる。
●法師温泉 長寿館
群馬県利根郡みなかみ町永井650
℡0278-66-0005(代)
楽しみは「国の重要文化財登録の建物(3棟)」と「足元湧出泉」。






適温で湧く源泉でないと実現できない「足元湧出泉」。全国でも40数か所しかないとされている。(温泉根本主義者からするともっと少ない)
※温泉根本主義者とは
源泉に対するあらゆる人工的な加工(加温・加水・循環・消毒)をしていない。自然に湧出した源泉が湧出時から浴槽まで空気に触れることなく直接、浴槽に届いている。浴槽サイズと客数に応じた十分な量の温泉が浴槽に注がれている。浴槽の温泉の新湯との入替えは1ターン1時間以内が目安。
といった温泉を嗜好する。
事前に調べた情報で訪れるが、実際の運用や適性表示ではなかったりすると、見抜けなかった自分を責める。
■足元湧出温泉(一例)
★印は入浴済
・北海道 然別峡かんの温泉
・北海道 池ノ湯温泉露天風呂
・北海道 和琴温泉露天風呂
・北海道 丸駒温泉旅館(入浴予定)
・北海道 ニセコ薬師温泉旅館
★・青森県 酸ヶ湯温泉
★・青森県 蔦温泉 蔦温泉旅館
★・青森県 谷地温泉(三大秘湯)
★・岩手県 藤七温泉彩雲荘
(ボコボコ感強め)
★・岩手県 鉛温泉 藤三旅館
★・岩手県 夏油温泉元湯
★・秋田県 乳頭温泉郷鶴の湯
・秋田県 奥子安大湯温泉
・山形県 湯守りの宿三之亟
★・山形県 蔵王温泉 河原湯共同浴場
・宮城県 鬼首温泉
・福島県 木賊温泉 岩風呂
・福島県 横向温泉 滝川屋旅館
・福島県 湯岐温泉山形屋旅館(岩風呂)
★・福島県 大丸あすなろ荘
・福島県 湯ノ花温泉石湯
・栃木県 奥塩原新湯温泉むじなの湯
・栃木県 福渡温泉 岩の湯
・栃木県 奥那須温泉
★・群馬県 法師温泉 長寿館
・群馬県 尻焼温泉 河原湯
・新潟県 栃尾又温泉したの湯
・山梨県 増冨温泉不老閣
・山梨県 下部温泉古湯坊 源泉舘
★・富山県 鐘釣温泉
・長野県 切明温泉
★・長野県 奥蓼科温泉渋御殿湯
★・和歌山県 川湯温泉仙人風呂
★・和歌山県 湯の峰温泉つぼ湯
★・和歌山県 白浜温泉崎の湯(現在は引湯)
・岡山県 湯原温泉郷郷緑温泉郷緑館
・岡山県 奥津温泉奥津荘(入浴予定)
・岡山県 奥津温泉東和楼(入浴予定)
・岡山県 湯原温泉 砂湯
・岡山県 真賀温泉 幕湯(入浴予定)
・鳥取県 岩井温泉 岩井荘(入浴予定)
・鳥取県 三朝温泉 旅館大橋(入浴予定)
・鳥取県 三朝温泉 中屋(入浴予定)
・島根県 千原温泉湯谷湯治場
・島根県 川底温泉蛍川荘
・山口県 長門湯本温泉 恩湯(入浴予定)
・大分県 壁湯温泉福元屋(入浴予定)
・大分県 川底温泉 蛍川荘
・熊本県 地獄温泉青風荘(入浴予定)
★・鹿児島県 指宿温泉村之湯共同浴場
・鹿児島県 湯川内温泉かじか荘(入浴予定)
上記には「足元湧出泉のみ」、「足元湧出泉+(別途)補完泉」、「足元湧出泉+別源泉引湯補完」、「足元湧出泉+河川水」等が含まれます。
(個人調べ、転記不可、入浴の際は自助努力・自己責任で足元湧出であるかの再確認をお願いします。いないとは思いますが「行ったけど足元湧出じゃなかった。どうしてくれるんだ」については責任を負えません)
当宿の「法師乃湯」は1895年築、国の登録有形文化財。
アーチ窓,丸太で仕切られた田の字区分けの浴槽。
↓ 浴槽及び更衣室は撮影機器持込禁止なので購入したファイルの画像

与謝野晶子が「草まくら手枕に似じ借らざらん山のいでゆの丸太のまくら」と詠んだこの浴槽。
ところどころ、プクプクと温泉が湧く。(画像は宿のHPより)

全国的にみても貴重な足元湧出泉として知られる。
「足元湧出泉入浴」とは、簡単に表現すると「温泉の湧く場所に作った浴槽に浸かる」ということ。
足元湧出温泉が喜ばれる理由
温泉は地下から沸き出ている25℃以上の温水か、あるいは25℃未満でも成分の規定を満たせば温泉と定義される。(環境省「温泉の定義」)
足元湧出泉になる条件としては「適温」「浴槽規模に応じた湧出量」が必要。
例えば、源泉温度97.3℃の玉川温泉の大噴源泉に浴槽を作って入浴したら即、火傷ということになってしまいます。もっとも、以前は大噴源泉近くの場所(岩盤浴テントの前付近)に露天風呂はあったが、そちらは適温に加水されていた(らしい)。
↓ 玉川温泉 露天風呂



足元湧出温泉が温泉マニアに人気の理由は「鮮度」。
ちょっとだけ温泉のことを深堀りしている人は皆さんご存じの「活性力」。
源泉が泉質名を表示することのできる「療養泉」(なにがしかの適応症効果[×効能]が期待される温泉)であっても、浴槽が源泉の成分を維持しているかは不明。
前述の玉川温泉の例を挙げると、
☆温泉分析書成分データ
(大噴源泉成分総計)
8,461mg(8.46g)※ガス成分含
泉質名:酸性・含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)-塩化物泉
源泉湧出時に二酸化炭素と硫化水素が空中に拡散
↓ 湯桶500m通過で26%消失
(溶存成分)6,265mg(6.265g)
※以上2011年玉川温泉データ
☆浴槽内成分(玉川温泉湯治の手引きより)
※2016/11/28分析データ
①源泉100%浴槽(p.H1.2)
★大噴源泉から届いた時点の蒸発残留物3,952mg(3.95g)で浴槽投入後は3,800mg(3.8g)。
※大噴源泉8,461mg
→玉川温泉到着時6,265mg(2011年分析書)
→玉川温泉浴槽投入時5,568mg(2014年分析書)
→玉川温泉大噴源泉蒸発残物3,952mg(2016年手引書)
(源泉成分から53%消失)
浴槽温泉成分の泉質は源泉とは異なる
「 酸性・鉄(Ⅱ・Ⅲ)・(アルミニウム)・塩化物温泉」
②源泉加水率50%浴槽(p.H1.4)
★蒸発残留物2,640mg(2.64g)
・大噴源泉8,461mg(8.46g)※ガス成分含から69%減衰。
・源泉100%浴槽と比較すると31%減衰。
※加水率50%でも成分は31%しか減らない。加水率は温泉施設により「冷却のため(加水率少ない)」から「内緒だけど水増しするため70%~90%加水していた(他地区某施設元従業員より聴き取りなのでデータ的確証無し)」まで幅広い。
特に、温泉が活性力を失うと、療養泉として期待する適応効果(×効能)も減衰が予想され、「美人の湯」として期待したのに、肌は一旦、ツルツルになるのに効果が維持できない等々、いろいろと不具合とまではいかないものの、少々、不満を感じることもある。
※温泉に浸かって「あぁ~気持ち良い」とだけ思いたい人には関係のない話です。
成分劣化の最大原因は「酸素に触れることによる成分変化とお湯の老化現象」、「源泉地から遠い」、「源泉から貯湯槽経由で配湯」、「施設での加温・加水・循環利用・消毒」、「温泉投入量に比して入浴客が多すぎる、浴槽が広すぎる」、「入浴客のマナー違反(かけ湯しない・タオル漬・不潔な輩)」。
要するに「源泉が療養泉であっても浴槽で入浴している時はただの“温泉”かもしれないし、もしかすると、温泉でさえないのかも知れない」という不安がつきまとう。
足元湧出泉は源泉湧出時の成分がそのまま浴槽に注がれていることで、温泉に一番大事な「活性力」を期待できる。
前述のような不安(活性力低下、汚れ、成分変化)が無い、あるいは少ないのが「足元湧出泉」の最大のメリットです。
ただ、温泉マニアの中には足元湧出泉のように鮮度が良く、活性力を期待できる温泉よりも、投入後、しばらく経過して成分変化が落ち着いたお湯の状態を「エージング(熟成)」と称して愛好する方もいる。これは頭でっかち的な温泉根本主義者とは違うぞというベテラン組や温泉経営・実務者に多いような気がする(私的印象)。
長寿館の温泉について
(当館のすべての浴槽が足元湧出や源泉かけ流しという訳ではない)
長寿館の浴槽では「法師乃湯」と「長寿乃湯」が足元湧出泉で源泉かけ流し。
もう一つの「玉城乃湯」は循環です。
いずれも「還元系温泉」として認証されているが、循環運用されている玉城乃湯も認証されているのが不思議。おそらく、新湯(源泉)混入率と投入量が多めなのか、それとも別の理由があるのかは不明不知。



●法師乃湯(混浴だが女性専用タイムあり)
↓ 入浴及び更衣室の場所はスマートフォン機器を含む撮影機器の持ち込みは禁止です。盗撮を疑われて通報されるリスクを冒したくないので浴槽画像は宿のHPに掲載されている画像、及び購入ファイルの画像です。





「当宿の法師乃湯は1895年築にして国の登録有形文化財。アーチ窓,丸太で仕切られた田の字区分けの浴槽。与謝野晶子が[草まくら手枕に似じ借らざらん山のいでゆの丸太のまくら]と詠んだこの浴槽」と前段で紹介済。
当段では温泉について深堀して覚書としたい。
法師乃湯は、一般旅行客から国鉄時代のフルムーンポスターや映画テルマエ・ロマエの入浴シーン等で認知されているが、温泉マニアにとっては、なんといっても「足元湧出泉」が魅力。


田の字に丸田で区切られた浴槽をじっと見ていると、ところどころでプクプクしているのがわかる。
このプクプクしている場所は少なく、客が付いていてなかなか空かない。特等席です。
温泉に入っていて鮮度感や活性感を体感することはあっても、“見える化(本来の意味とは違うが)”できることは少ない。
プクプクしていることで「あ~。今、私は特別な体験をしている」という感慨にふけることができる。
翌朝に入浴した時はプクプクの場所が変っていたことを付け加えておく。
足元から湧き出る源泉「旭の湯」は温度が42.7℃という、足元湧出泉として最適な温度帯。
加水や加温をせずとも良いので、温泉利用表示には「加水・加温無し」と表示されている。
浴槽温度は39.5℃から41.5℃。源泉温度は日により変化するので調整が難しい。足元湧出源泉に加えて「引湯距離2m」の同じ源泉を浴槽上から調整も兼ねて投入している。
温泉マニア未満の方が喜ぶ「源泉かけ流し」であっても、浴槽温度を適温に保つために加水調整されていることがある。
どの程度、加水されているのかを表示している温泉施設は稀。表示していない場合は何か隠し事があると推測している。
少ない源泉をかき集めて貯湯棟(注意:貯水棟ではない)に貯めておいて、それを加温して使っているだけでなく、何故か適温調整の加水(水増し?)までして源泉かけながし運用をしている施設もあったので、源泉無加工の源泉かけ流し運用は嬉しい。
ちなみに、日本温泉協会2010年5月31日掲示有効期限のデータなので参考数値)
当温泉の源泉新湯投入量は毎分、155.5リットルとなっている。
一般に、源泉かけ流しに必要な湧出量は1人あたり1リットル/分とされることがある。目安的な数値だが、これに相当すると100人分に対応可能ということがわかる。
さらに、重要なのは浴槽の大きさとのバランス。
当湯は新湯投入で空の浴槽を満タンにできるまでに約1時間51分と、少々長いのが気になる。
できれば浴槽は現状の半分程度が適正ではないかと推測(循環の場合の「1時間1ターン原則」中央温泉研究所甘露寺氏説は源泉かけ流し温泉にも通用するのではないか)。
ただし、「清掃後お湯満たし5時間(温泉ソムリエ協会遠間氏)」という目安もあるため、これだけ広い浴槽を2時間弱で満たせるということには感心する。
ちょっとだけ気になるのは2010年までの利用証に「入替頻度」として、週に1回となっている。尚、前述の通り、2010年までの有効掲示なので、現在は不明。

入浴当日の施設の表示


残念ながら温泉分析書からの抜粋なので、最重要データの「湧出量」「ミリバル(%)」がカットされているのが不満(温泉分析書不掲載は法令違反ではなく、当宿では法律の表示義務内容は表示されているので適法)。
特に湧出量は鮮度を推測するデータとして、ミリバル(%)は泉質名を担保するデータなので表示していただきたい。
温泉客の中にはそういったデータを必要とする客がいる。また、宿に聞いても面倒くさそうな対応や露骨に嫌な顔をされたことがトラウマになっていて、名湯とされる施設ほど聞きにくいという私的理由もある。
泉質名 カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉
分類 低張性アルカリ性温泉
源泉名 旭の湯
泉温 42.7℃
湧出量 155.5リットル/分
pH 8.2
成分総計 1.18g/kg(1180mg/kg)
(成分総計ではなく、温泉基準値である「溶存物質計・ガス性のものを除く」で表示してほしい)
成分量は温泉基準値(溶存物質1,000mg/kg)ギリギリ。もっとも溶存ガス成分は0gだし、泉質名が付いているので溶存物質計は温泉基準値である1,000mgを超えているのはわかる。(溶存物質計を表示して欲しいという理由はこのこと)

●長寿乃湯(男女タイムあり)
↓ 入浴及び更衣室の場所はスマートフォンを含む撮影機器の持ち込みは禁止です。盗撮を疑われて通報されるリスクを冒したくないので浴槽画像は宿のHPに掲載されている画像、及び購入ファイルの画像です。


温泉のことだけを思えばこちらの長寿乃湯は法師乃湯よりも期待していた。
理由は「浴槽が小さいので鮮度に期待できる」。
浴槽が大きい法師乃湯が155.5リットル/分に対して、長寿の湯の湧出量は87.6リットル/分。
1ターン(エージング湯と新湯の総入替)時間は法師乃湯2時間弱に対して、長寿乃湯は37分と短い。
昨今人気の“ドバドバ温泉”程ではないが、これだけ1ターン時間が短いと、鮮度の良い活性力のある温泉が期待できる。



さて、どこから出ているのかな?と探すと一か所からプクプク。私が探していると、常連客から「そっち(別の場所)も出ているよ」と教えてくれた。
当湯も足元湧出泉だけでなく、上から新湯(同じ源泉を6m引湯)を投入している。
この浴槽に4人が入るとちょっとお湯の鮮度よりも、一人当たりの汚れ0.5g~の影響が気になってくる。男性タイムが限られているのが残念。
入浴者不在で1ターンした直後の浴槽に入りたかった。
法師乃湯同様に7日毎の入替というのが気になる。日々の掃除の時には入れ替えてない?。前述の通り、2010年までの有効掲示なので、現在は不明。
↓ 日本温泉協会の評価は長寿乃湯がオール5の満点

源泉名 寿の湯
湧出量 87.6リットル/分
泉温 42.2℃
泉質名 カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
pH 8.3




●玉城乃湯
◇中浴場(内湯)
↓ 入浴及び更衣室の場所はスマートフォンを含む撮影機器の持ち込みは禁止です。盗撮を疑われて通報されるリスクを冒したくないので浴槽画像は宿のHPに掲載されている画像、及び購入ファイルの画像です。






運用状況としては「循環あり」「加水無し」「加温(熱交換)」「1ターン100分」ということで、足元湧出ではない循環湯。
泉質的にはあまり期待できないものの、気持ちの良い入浴としいう点では悪い印象ではありません。特に寒い冬でも加温調整が適時可能というメリットがあります。
温泉に期待することは「あ~気持ちよかった」という客むきの浴槽です。
源泉名 官行温泉(寿の湯、官行の湯混合泉)
湧出量 87.6リットル(寿の湯)
190リットル(官行の湯)
新湯投入量 68リットル/分
(1ターン100分)
泉温 42.2℃(寿の湯)
27.8℃(官行の湯)
泉質名 カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(寿の湯)
単純温泉(官行の湯)
pH 8.3(寿の湯)
8.3(官行の湯)
成分総計 0.53g/kg(530mg/kg)

◇野天風呂(露天)
↓ 入浴及び更衣室の場所はスマートフォンを含む撮影機器の持ち込みは禁止です。特に女性による女風呂の盗撮事件があってからは男女を問わず盗撮を疑われて通報されるリスクを冒したくないので浴槽画像は宿のHPに掲載されている画像、及び購入ファイルの画像です。

内風呂が寿の湯と官行の湯混合泉であることに対して、野天風呂は官行の湯の単独源泉。
だだし、運用は「循環併用式」。「加水無し」「加温あり」(熱交換)」「消毒剤使用」。
官行の湯は源泉湧出地から115mほど引湯しているが気にするほどの距離ではない。
気になるのは注入量が50リットル/分で、野天風呂を満タンにするのに4時間45分と時間がかかるので、当然、1ターンも相応の時間がかかる。エージングの湯を楽しみたい方には良いかもしれない。野天風呂のみ消毒剤が使われているのは、循環湯で投入量もさほどではないためと推測される。
成分総計が0.53g/kgという療養泉基準値(1g/kg)の半分程度の薄目成分ながらも、源泉温度が28℃で療養泉基準値をわずかに上回っているおかげで「単純泉」という泉質名称がつき、適応症の表示が可能となる。
源泉温度が28℃なので加温(熱交換)して浴槽温度が適温になるようにしている。
源泉名 官行温泉(官行の湯)
湧出量 190リットル(官行の湯)
新湯投入量
泉温 28℃(官行の湯)
泉質名 単純温泉(官行の湯)
pH 8.3
成分総計 0.53g/kg(530mg/kg)

◇結論(温泉について)
浴槽の湯のすべてが足元湧出では無いというのが残念。温泉根本主義者としては「足元湧出と引湯混合(単一源泉)」というのが適正表示ではないかと思う。
自噴(自然湧出)の足元湧出泉である浴槽が2つ、それぞれ別源泉であるというのが嬉しい。
長寿乃湯の活性力も感じることができたのも良い入浴体験だった。
ただし、人気の宿なので独りで独占利用は難しい。
最後に。
「温泉分析書」は是非とも公開して欲しい。
ちなみに1957年(昭和32年)の温泉分析書は公開されていた
↓ 過去の温泉分析書



建物について
当温泉の建物のうち、3棟が国の有形登録文化財に登録されている。



●本館
長寿館では古い客室棟ということもあり、全室トイレ無し。20番の部屋に与謝野晶子が投宿。







●別館
本館から法師川に架けられた渡り廊下を通って別館に至る。1940年(昭和15年)建築ということもあり、本館客室には無いトイレが付いている。同行の妻はトイレ無し、すなわち共同トイレが苦手なのでトイレ付はありがたい。

●法師乃湯
1895年(明治28年)建築。窓枠の造り、その他、時代、鹿鳴館仕様の雰囲気。
(詳細は前述の「長寿館の温泉について」を参照)

●薫山荘
別館の隣に1978年(昭和53年)建築。少々お高めの部屋。夏目雅子氏は一階の角部屋で、高峰三枝子氏は34番に宿泊。
法師川沿いにあるので人気の施設。どちらかというと、「私はあなたたちとは違うんです」的なブログ記事を書くようなタイプの方、もしくはお金持ちが宿泊している私的印象。




↑ 左が薫山荘で右奥が別館。流れるのは法師川。右手前は本館からの渡り廊下。
●法隆殿
建替改装されたのは1989年(平成元年)。2部屋(8畳と4.5畳)。
今回宿泊したのはこちらの法隆殿。
国の有形登録文化財の宿は寝るよりも見るものだということを金具屋(渋温泉,長野県)宿泊で体験しているので本館・別館ではなく、法隆殿を選択。





●周辺風景
温泉棟






長寿館周辺風景











★食事


◇夕食


先付
・なめこおろし(海老、なめこ、オクラ)
・甘栗
・味噌豆腐

吸物
・松茸土瓶(松茸・白舞茸・三つ葉)

造り
・ギンヒカリ
・鯉洗い
・トロ湯葉
・手のし蒟蒻

やきもの
・麹鮭舞茸はさみ焼き

煮物
・大根、インゲン、もみじ麩、そぼろ庵


蒸物
・茶碗蒸し(椎茸・銀杏・海老・三つ葉)


揚物
・川魚の南蛮漬け


酢の物
・鶏寄せ(赤城鶏、生姜)
・クコの実
・赤根大根
・きゅうり
・杏子寄せ

鍋物
上州麦豚すきやき鍋
・地場産キノコ
・おっ切り込み
・葛切
・長葱

ご飯
・みなかみ米作り名人の自信作
香の物
・自家製漬物三種盛
デザート

メニュー表示が詳しくてあいがたい。
特に群馬産には丸印を付けてくれているのが地産品好きには嬉しい。
実食した中で初実食は「ギンヒカリ」。
▢ギンヒカリ
最初はコメの品種かと思ったが、大型ニジマスの群馬県作出品種とか。
ニジマスは2年で成熟し、その後、肉質が低下するが、まれに3年で成熟する個体があった。それを 群馬県水産試験場で作出、選抜育成し、固定化。
3年物なので魚体が大きいというのが特徴。
「ギンヒカリ」という名称で商標登録(2002年)。
ギンヒカリの定義は「群馬水産試験場で作出された卵や稚魚で養殖」「天然色素であるアスタキサンチンが配合された餌を3ヶ月以上与えたもの」「魚体重1Kg以上」。
大型サイズなので肉質が良いことや肉色は赤身が強く味も美味。
妻は川魚が苦手なので鯉は当方が二人分食したが、ギンヒカリは妻も美味しいと食した。
クセもなく、脂もあり食べやすい。

▢おっ切り込み
群馬県の郷土料理。野菜と一緒に幅広の麺を煮込む料理。「おきりこみ」とも言う。
今回は上州麦豚すきやき鍋に使われていたが、麦豚の下に隠れていて見えない。
こういった地場料理でも、初実食という機会が少なくなってきたので、初見のメニューや食材を発見すると嬉しくなる。
◇朝食



秘湯の宿といっても昨今は食事も充実しているが、小食なのでいろいろと出てくる会席風の食事は苦手。
最近は朝食付で宿泊し、夕食は近隣の飲食店で地場の逸品を探して食事することが多い。
ただし、当館のように一軒宿の秘湯温泉では近くに居酒屋さんも飲食店も無いので宿の料理に頼るということになる。
今回は美味しい食事で、すべていただくことができたが、できれば地元以外ではなかなか手に入らない食材、例えば今回のようなギンヒカリのような食材や在来種の伝統野菜など、「ここまで来ないとなかなか出会えない」という地域の逸品を少量だけ組み合わせていただければありがたい。特に会席の品目にこだわらなくても良いので、「小食向け特別素材メニュー」が選択できると嬉しい。
団体調理施設としては難しいかもしれないが、よろしくお願いします。
時々、出された料理の1/3も食せない時があるので。












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・「温泉根本主義者」からするとちょっと不満な足元湧出泉。それでも満足の理由。法師温泉長寿館(群馬県)法師乃湯,長寿の湯,玉城乃湯,夕食と朝食。国の登録有形文化財の建物。ギンヒカリ,おっ切り込み。